谷田部 高子 (1997年・マレーシア)
 時によって自分の考えも微妙に変わるものだけれど、とにかく何か違ったこと、もの、人に触れたくてエクスペディションに参加した。コミュニティープロジェクトでは、熱帯雨林の川沿いの小さな村でクラフトセンターの土台作りを体験。川辺にすわり、セメントと混ぜる小石を一つ一つ手で集めたり、川に着いた木材を運び上げるのに何日も費やしたり。仕事の効率から離れて、静かに広がる川とそれを囲む深い緑、見上げるとあちこちにぶら下がっている不思議な果物など、美しいものに囲まれて汗と汚れでぐちゃぐちゃになる毎日は、とても心地のよいものだった。言葉はほとんど話さないのに村の人たちとの時間はとてもゆたかで、彼らの素朴でたくましい生活に本物の豊かさを感じてはっとする思いもした。子供も大人も本当に美しくていい顔をしていて見とれてしまった。

 ジャングルを歩き、マレーシアで二番目に高いベノン山に登った3週間は、人間にはとてもかなわない、変えようのない自然の大きい存在感を肌で感じた。夜中、雷の音で目を覚まし、ハンモックから身を乗り出して明日の飲み水にする雨水を必死で集めた興奮は、今思うと非日常の出来事。そんな事が淡々と起きている。山道は歩くたびに別世界を体験する気がした。環境プロジェクトではWWFの森林調査の協力を行った。生活は仕事場である森の中。自然を利用して生活をつくっていく面白さと、自然を変えている事実へのもどかしさとの両方を肌で感じた。

 3つのプロジェクトを通して、どこに行っても自然と人と物があってすべてはその組み合わせなのを強く感じた。その組み合わせの世界には、分かりきったこともわからないこともたくさんあって、一つの物事に対してさえ一つの正解なんて見つからない。自分と世界との関わり方は自分に責せられている。エクスペディションも自分が自分なりの何かを得ない限り、パックツアーと変わらなくなってしまう。美しいものを見たい、面白いことをしたいという欲求はいつまでもなくさずに自分のエクスペディションを続けたい。